製造工程

粘土を造るところから作陶が始まります。
地元の土と釉薬を使い、手作業で器を作る。
今も昔も変わらないこだわりがあります。

  • ①「土造り1」

    台原(仙台市青葉区)の粘土層から掘り出した土を使用して器を作っています。
    そのままでは作陶に使用できないので、工程を重ねて粘土に精製していきます。

    ・敷地に運んだ土を細かく掘り出します。
    ・ミキサーで攪拌・粉砕して土を溶かします。
    ・網で濾して木の根や石などの不純物を取り除きます。

    土を掘り出す 掘り出した土 ミキサーで溶かして網で濾す
  • ②「土造り2」

    ・泥状の土を水槽に溜め込み、沈殿させてねかせます。
    ・比重の違いで土と水が分離するので、上澄みだけを取り除きます。
    ・残った土を鉢に入れて数日陰干しさせ、余分な水分を飛ばします。
    ・適度な硬さになったら土練機に通し、室(むろ)で保管します。

    水槽に沈殿させてねかせる 素焼きの鉢に入れて乾燥 土練機を通した粘土
  • ③「土練り」

    成形を行う前に粘土を練ります。
    練ることで成形しやすくなり、後の工程でひび割れが発生するのも防ぎます。

    ・粘土の内側と外側の硬さを均一にします。
    ・粘土の粒子を整え、中の空気を抜きます。
    ・練り終えた粘土を砲弾状にまとめます。

    硬さを均一にする 粒子を整えて空気を抜く 粘土を砲弾状にまとめる
  • ④「成形」

    主に制作している食器類は、電気ロクロを使用して成形します。

    ・粘土を上げ下げして芯(中心)を出します。
    ・適量の粘土を取って挽いていきます。
    ・挽き終えた器をしっぴき(糸)で切り離します。

    粘土を上げ下げして芯を出す 適量の粘土を取って挽く 形を整え、その後切り離す
  • ⑤「高台(こうだい)仕上げ」

    器を適度な硬さに乾燥させた後、伏せて高台を削りだします。

    ・ロクロの天板にシッタ(円筒)を備え付けます。
    ・伏せた器をシッタに固定し、カンナで削っていきます。
    ・高台裏に判子を押します。

    シッタにはめた器をカンナで削る 削り終えた器 高台裏に判子を押す
  • ⑥「乾燥」

    粘土は水分が残った状態で焼成すると割れてしまうので、十分に乾燥させます。

    食器などの小さい器は1週間程度乾燥させます。
    大きい作品は1ヶ月以上かけてゆっくりと乾かします。

    乾燥させた器 乾燥させた器 乾燥させた器
  • ⑦「素焼(すやき)」

    800度前後までゆっくりと焼成します。
    焼成後は常温になるまで数日待ち、中の器を取り出します。

    素焼を行うことで、釉薬を掛ける際の型崩れを防ぎます。
    また、素地への釉薬の定着も良くなります。

    素焼きから数日後の窯出し 窯から器を取り出す 素焼きした器
  • ⑧「釉薬(ゆうやく)調合」

    本焼で必要となる釉薬を調合します。
    ・鉱物や金属など、様々な原料を計算した調合比率で混ぜ合わせます。
    ・ポットミルで攪拌・粉砕します。
    ・網で濾して細かな不純物を取り除きます。

    堤焼の代表的な釉薬である海鼠釉(なまこゆう)は地元で採れる原料を使用しています。
    ・鉄分を多く含んだ川端の岩
    ・お米の籾殻灰...など

    釉薬の原料 ポットミルで攪拌・粉砕 釉薬を網で濾す
  • ⑨「釉掛け(くすりがけ)」

    素焼の器に釉薬を掛けます。
    釉薬を水と混ぜ合わせ、適度な濃さに調節して器に掛けていきます。

    堤焼の海鼠釉の場合、2種類の釉薬を掛けます。
    黒の釉薬を掛けて数日乾燥させた後、白の釉薬を掛けます。

    海鼠釉の下掛け 海鼠釉の上掛け 釉掛けした器
  • ⑩「本焼(ほんやき)」

    一日かけて1250度前後まで焼成します。
    焼成後は常温になるまで数日待ち、中の器を取り出します。

    釉薬は粘土の表面と溶け合い、ガラス質となって水分の浸透や汚れを防ぎます。
    また、釉薬の濃淡や温度の強弱によって器の表情が変化し、それぞれに個性が生まれます。

    器の窯入れ 本焼きから数日後の窯出し 焼き上がった器
  • ⑪「ハマすり」

    釉薬を掛けていない高台部分はザラザラしており、テーブルなどに傷がついてしまいます。
    そのため、最後に高台部分を削ります。

    ・砥石で削って表面を滑らかにします。
    ・ガタつきを砥石で修正して水平にします。
    ・傷や割れをチェックし、完成となります。

    砥石で高台周辺を削る ガタつきがないか確認 完成した器